アメリカの教育制度は基本的に日本と同様で、12年間の初等、中等教育(中学・ 高等学校)を修了した後に大学学部課程があります。従って、日本の高校を卒業、 ないしはそれと同等の資格があれば、アメリカの大学への留学は可能となります。
大学学部課程( undergraduate program)には次の2年制大学と4年制大学が あります。
1.2年制大学
2年制大学(two-year college)は通常2年間の学部課程で、修了すれば準学士号/短期大学士号(Associate of Arts / Science Degree, A.A / A.S.)が与えられます。現在、アメリ カには1,721校(2009-10 年、この数字には認定を受けていない大学も含まれる) の2年制大学があり、公立はコミュニティカレッジ(community college)、また私立はジュニアカレッジ(junior college)などと呼ばれています。全米の大学生の 約37%は2年制大学に在籍しています(出典:Digest of Education Statistics 2010, National Center for Education Statistics)。また、留学生全体の約12%が2年制大学で学んでいます(出典:Open Doors 2011, IIE)。
1)公立2年制大学(Community Colleges)
A. 背景
公立の2年制大学はコミュニティカレッジと呼ばれ、主に地域住民の税金により公立大学として運営され、地域住民(コミュニティ)を対象とした多様な教育内容を、低価格で提供しています。その特色としては、広い分野にわたる技 術・職業訓練を目的とした職業教育コースや、公立4年制大学に編入するための一般教養のコース(進学コース)を持ち、学生層が年齢・性別を問わず厚く [女性の割合:58%、平均年齢:28歳(出典:2011 Community College Fast Facts, American Association of Community Colleges)]、生涯教育の場として も利用されていることがあげられます。また、州や地域によっては、一定の年齢 (多くは18歳)に達していれば、高校中退者にも、門戸を開放し、高校レベルの 補習教育を施した後、正式にコミュニティカレッジのプログラムで学ばせると ころもあります。
コミュニティカレッジは、基本的に “open admission” という「必要最低限の資格を満たせば、誰にでも門戸を開く」という「教育の機会均等」の理念の下に運営されていますので、入学条件は概してゆるやかです。しかし、自宅からの通学生が多いため、コミュニティカレッジでは、学生寮の設備を備えていない大学がほとんどです。寮のあるコミュニティカレッジは、全体の約3割(約320校)となっています(出典:2011 Community College Fast Facts, American Association of Community Colleges)。寮のないコミュニティカレッジに留学す る場合は、自分で住む場所の手配等を行わなくてはいけないことに留意しまし ょう。 ただ、コミュニティカレッジは、大学に比べて授業料が安く入学基準がゆる やかなことから留学生にも人気があり、こうした状況を反映して、最近では学生寮を持ち、留学生アドバイザーを配置するなど、留学生を積極的に受け入れるようなコミュニティカレッジもあります。
B. 公立2年制大学の主な教育課程
・職業教育コース(occupational / vocational / technical program)
すぐに仕事に就くための実践的教育を行います。分野は、多岐にわたり、学位取得を目指さない学生のために、2年以内の修了証( certificate)コースを備えているところもあります。
・「進学コース」(transfer/general education program)
2年間の一般教養課程を修めた後、同じ州内の公立の4年制大学の3年次 (junior)へ編入することを想定しています。 Articulation agreementと呼ばれる編入・進学するための成績条件(GPA)が各大学間協定で定められており、 編入するにはその条件(成績等)をクリアする必要があります。
職業教育コースを選んでも、途中から進学コースに移ることは可能ですが、 職業教育コースで取得した単位は、通常一般教養以外の単位は互換対象にはなりません。また、協定を結んでいない他州の公立大学や私立大学への編入も可能ですが、必ずしも2年間で取得したすべての単位が互換されるとは限りません。
2)私立2年制大学(Junior Colleges)
私立の2年制大学は一般的にジュニアカレッジと呼ばれ、独立した組織によって運営されているものと、宗教関係団体によって運営されているものとがあり、 おおむね小規模で学生寮を備えています。
ジュニアカレッジは、主に4年制大学への編入を想定した進学コースを提供しており、中には編入率が高い大学もあります。授業料は一般にコミュニティカレッジより高額です。
■ 関連サイト
American Association of Community CollegesCollege Board "Community College Resources"
2.4年制大学
4年制大学(four-year college)は通常4年間の学部課程で、修了すると学士号(Bachelor’s Degree, B.A. / B.S.)が得られます。日本と異なり、教養課程・専門課程の区分けがはっきりしていませんが、一般的に1-2年次に教養科目 (general education / liberal arts courses)を中心に取り、2年次後半から3年次前半までに専攻(major)を決め、3-4年次にその専門科目を取って卒業に必要な単位数を満たし、学位を取得します。 また、一部の専門分野(看護学等の保健分野、美術や音楽等の芸術分野、工学 など)を除いては、入学時に専攻科目を決めなくてもよいプログラムが数多くあり ます。薬学(pharmacy)、工学(engineering)、建築学(architecture)等の専門分野では学士課程の修了に5年かかる場合もあります。
全米には公立、私立合わせて、2,774 校(2009-10 年、この数字には認定を受けていない大学も含まれる)の4年制大学があります(出典:Digest of Education Statistics 2010, National Center for Education Statistics)。4年制大学は、大別 して1)一般教養全般に主眼をおき学部課程での教育に力を注いで大学院進学等に備えている大学(liberal arts colleges)、2)大学院課程を併せ持ち研究にも力を入れている総合大学(universities and colleges)、3)専門/単科大学(specialized colleges)があります。
いずれの場合も「大学」と呼ばれていますが、大学は学生数が1,000 人以下の 小さなものから、5万人位の大規模なものまで多様です。公立2年制大学と異なり、ほとんどの4年制大学では、寮の設備を備えています。
1)リベラルアーツカレッジ(Liberal Arts Colleges)
アメリカにおいてリベラルアーツカレッジ( liberal arts college)とは、学生が 幅広い教養を身に付けることに主眼をおき、一般教養課程を主体とした大学を指 します。アメリカの大学学部課程は、人格形成の場という理念があり、学生が人文・社会・自然科学を多岐にわたりバランスよく学ぶことで、豊かな教養と人間性を育成することを目指しています。その多くは私立の比較的小規模(学生数 1,000~3 ,000人)な大学です。静かで豊かな環境を備えた田舎や郊外にキャンパ スを構える大学が多く見られます。
リベラルアーツカレッジで学ぶ利点は、大学院まで併せ持つ大規模な総合大学に比べ、教授対学生の比率が低く(1人の教授が受け持つ学生の人数が少ない)、 学生に対するケアが行き届いていることと、教授が研究より教えることに力を注いでいる点などがあげられます。
また、特定の専攻分野を定めず、一般教養(liberal arts)で学士号を取得する こともできますし、一般教養を学んだ後、あるいは一般教養と並行して専門分野を学び、その専攻で学士号を取得することも可能です。
アメリカでは、リベラルアーツカレッジで一般教養を学び、その後、特定の専門で大学院に進学して専門性を高める方も少なくありません。ただし、一般に公立大学に比べ、私立のリベラルアーツカレッジの授業料は高額なので、奨学金の可能性もあわせ、留学経費をどう賄うかを十分検討する必要があります。
2)総合大学(Universities and Colleges)
一般的に、カレッジ(college)は比較的小規模で大学学部や大学院課程の教育に重点をおいています。一方、ユニバーシティ( university)は研究者養成を目的として設立され、博士課程まで備え、多彩な専攻分野や学位プログラムを提供しているところが多く見られます。ただし、両者の間にどちらが優れている等の優劣はなく、むしろ個々の大学によって個性・特色が異なるという点に注目したほうがよいでしょう。
総合大学には、州が予算を出す公立大学と、学生の授業料で運営される私立大学があり、それぞれの大学により教育内容、授業料、施設等が大きく異なります。
公立総合大学は、概して学生数2万人以上の大規模校が多く、その州の税金を納めている住民には州外の住民よりも安い授業料が設定されています(注:留学生は一般に州外の住民と同じ。州や大学によっては例外あり)。その州の住民に入学の優先権があるため、留学生にとっては授業料に差がつくのと同様、州の住民よりも入学審査基準が厳しくなる傾向があります。
私立総合大学は、授業料、寄付等により運営されているため、一般に公立大学 よりも授業料が高くなる傾向がありますが、州の住民かどうかの区別はされません。また、概して公立大学より小規模な大学が多くなっています。
3)専門/単科大学(Specialized Colleges)
アメリカにはビジネス、音楽・アート・ダンス等の芸術系、建築、工学、看護学 等の専門分野の教育を提供している単科大学があります。このような専門/単科 大学のうち、芸術・建築系の大学への入学には、個人の能力・技能を示す作品提出やオーディションが義務付けられる場合があります。
■参考文献
EducationUSA Connections
Journal Vol. 2, Issue 2: Liberal Arts Colleges
Journal Vol. 4, Issue 3: Studying the Arts in the USA
3.規模・特性による分類
アメリカでは2年制大学、4年制大学といった区分のほかに、大学の規模や特性で分類することもあります。
たとえば College Handbook 2010, College Boardによると、学部生の人数で次の様な分類がされています:
very small:750人以下、 small: 750-1,999人、 medium to large: 2,000-7,499人、 large: 7,500-14,999人、 very large: 15,000人 以上。
また、 colleges for women / men(いわゆる女子大学、男子大学)、colleges with religious affiliation(特定の宗派とつながりを持つ大学。歴史的・伝統的に 宗教的な建学の精神性のみが継承されている大学から、現実的に規律や学生生活 が宗教性にのっとったものまでさまざま)、historically black colleges(歴史的に、アフリカ系アメリカ人への教育を第一としている大学)など、さまざまな特性で分類することもあります。
4.アメリカの大学学部課程の特徴
1)専攻科目選択の多様性と柔軟性
2年制大学での職業教育コ-スでは専攻(major)がありますが、進学コ-スは一般教養が中心となります。
一方、4年制大学では通常2年次後半から3年次前半で専攻を決定します。また、必要取得単位数が増えますが、関連分野で副専攻(minor)を持ったり、ダブルメジャー(double major)で同時に2つの専攻分野を学び両方の分野の知識を深めることで専門性を高めることもできます。
さらに、アメリカの大学では、途中で専攻分野を変えることも可能です。専攻を変えた場合は、新しい専攻での卒業必要単位を余分に取得しなくてはならないので、卒業が少し延びることもあり得ますが、学期ごとの卒業が可能ですので必要 単位が取得できた学期の終わりに卒業が可能です。また、人気のある専攻を選んだり、適性を要求される専攻等に移りたい場合は、一般教養時の成績(GPA)などにより選抜されます。
2)編入の多様性と柔軟性
アメリカでは2年制大学から4年制大学へ、4年制大学からほかの4年制大学への編入学が比較的盛んに行われています。編入を希望する学生は今まで取得した科目と単位を示す成績証明書とシラバス(syllabus)といわれる授業の概要を記 したものを志望校へ提出して審査を受けます。
A. コミュニティカレッジから4年制大学へ
コミュニティカレッジの進学コ-ス(transfer program)に在籍する学生は、あらかじめその地域のどの4年制大学と編入学協定( articulation agreement)を結んでいるかを調べて出願するのが一般的です。協定があっても編入学審査、 つまり単位互換の認定審査は、個々の学生の成績(GPA)とすでに取得済みの科目内容が対象に行われ、必ずしもすべての単位が認められるとは限りません。 しかし、協定を結んでいる大学間では、編入学審査を通れば単位移行も比較的スムーズに行われるようです。同じ州内の公立大学間ではお互いに編入協定を結んでいるところが多く、成績(GPA)が編入のための主な基準となりますので、 あらかじめ編入条件をよく調べておきましょう。しかし、州が異なる公立の4年制大や私立の4年制大に編入を希望する場合は、上記の通りではありません。
B. 4年制大学から他の4年制大学へ
4年制大学間の編入では、受け入れ側の大学が独自に設けた基準を満たした上で、出願することになります。各大学ごとに、締め切り、必要最低限の成績 (GPA)、必要取得単位等の細かい要件が異なりますので、事前に編入希望大学 について調べておくことが肝要です。一般的に、入学審査は成績の良し悪しで左右されます。
C. その他の編入方法
上に紹介した2つの方法以外にも「日本の大学からの編入」、「日本から第2学士入学」という方法があります。
D. 編入の落とし穴
アメリカ人にとって、編入(transfer)は比較的容易に行われますが、「希望の大学に編入できるとは限らない」、「単位が必ずしもスムーズに互換されるとは限 らない」、「卒業までに余分な時間がかかる」、「編入に伴う精神的・金銭的負担がかかる」等さまざまな課題もあります。留学生にとっては必ずしも負担の軽いものではないということも理解しておきましょう。
■参考文献
Transfer Student Companion
Thomas Grites and Susan Rondeau, Wadsworth Publishing, 2008
Transitions: A Guide for the Transfer Student
Susan B. Weir, Wadsworth Publishing, 2007
3)条件付入学(Conditional Admission)
大学の中には、英語能力以外の条件が入学基準に達していて、英語力のみが不足している(大学の求めるTOEFLの最低点に満たない)留学生に、英語研修の受講を義務付けることを条件に入学を許可するところがあります。その場合は、 大学に付属している英語研修所(一般に ESL/IEPなどと呼ばれる)があればそのプログラムか、他大学の英語研修プログラムで一定期間、留学生のための英語のコ-スを受講させます。
その結果、各大学の定める TOEFLの最低点や英語研修 プログラムの一定レベルをクリアできれば、正式に大学への入学が許可され、大学の正規の授業を受けることができます(大学によっては、英語研修と大学の正規の授業を並行して履修できる場合もあります)。このような制度を持つ大学は 1,000校以上あり、参考図書( International Student Handbook, College Board)で調べることができます。
しかし、条件付き入学においては、
1.英語力が向上しない限り正規の学生としての入学は許可されないので、留学期間が長引き経済的にも明確な予定が立てにくい、
2.初めから条件付き入学という出願枠があって応募するのではなく、大学側が総合的に判断して出願者の中から条件付き入学者を決定する、等の事情を留意する必要があります。
なお、条件付き入学における英語研修の受講は、大学学部課程出願者に英語力のみが足りない場合の措置ですので、大学付属の英語研修所へ語学留学生として入学することとは異なります。
英語研修所と大学は別個の教育機関ですので、後者の場合はあくまで語学研修所への入学となり、そこで英語力が向上したからと いって、必ずしもその研修所の母体である大学の学部課程に入学が許可されるとは限りません。
学部課程への入学には、英語力以外の出願条件も満たして改めて出願する必要があります。
留学というと留学費用がない、英語力などTOEFLスコアが足りない、
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